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コラム2007年6月

― 高齢者の歯や口の中について ―

平成19年6月1日

福岡大学名誉教授 前医学部歯科口腔外科教授
博愛病院 非常勤勤務   都 温彦

から病は口から、健康は歯と口からと相反する言葉が言われてきました。江戸前期の医者であり、儒学者であった筑前福岡藩士、貝原益軒の著書「日本歳時記」には種々な生活上の注意や食べ物、農養生などが記されています。その中に「人は歯をもって命とする故に歯という文字はよわい(齢・歯)ともよむ也」という含蓄に富む言葉が述べられています。

常的に歯や口が病と関係する例では、お宮詣での際に境内にある手水場で手を洗い、口をすすぎ清めることや外出からの帰宅後には手や顔を洗い、うがいをすること。又、大相撲では力士が仕切りに入る前に口をすすぐ力水などがあります。それに朝夕の歯磨きは幼児の頃から躾けられる生活習慣です。このようなことは歯や口が汚れ易い所であり、細菌やウイルスなどの感染場であること、そして消化器や呼吸器、循環器などへの最初の感染経路であることを意味しています。

一方健康に関しては「良い歯で良く噛み、良い体」、「腹八分に医者いらず」などが言われています。このことは、ゆっくりとよく噛む食事が心身の健康を養い、過食を戒めることやよく噛むことが食欲を満足させ、食事の量を制御して生活習慣病の予防に役立つことを意味していると思います。

食べ物をよく味わうことについては情緒的満足ということもありますが、一般的に酸っぱくなった食べ物は腐敗、苦い味は毒物を現わしています。そして、甘と塩味は生体の維持や活動に必要な食べ物であるといえます。そこで前者には不快、後者には快の感情が伴っているものと思われます。このように舌の辺縁に存在している味覚器には食べて良いか、悪いかを識別する機能も備わっています。動物の解剖学では「動物の歯はその種の食べ物を表わしており、歯をみるとその動物本来の食べ物が分かる」といわれます。私達人間の歯と顎の関節は植物食を食べる類人猿のゴリラ、チンパンジー、オランウータンと殆ど同じであり、草食動物とも似ています。したがってヒト本来の食べ物も穀物や野菜などの植物食が主体であり、魚や肉類は二割程度であることが推定され、植物食に適応した体質とゆっくりと良く噛む食事が本来の姿であると考えています。ところが現代の日本人は粗ら噛みで、早い食べ方を行い、肉食が多くなりました。その結果、循環器病や癌などの消化器疾患、糖尿病、肥満などが注目されるようになりました。食事におけるよく噛む咀嚼の意義は、特に植物食の表皮を形成する食物繊維に対する消化酵素を私達人間は持っていないので、植物食の表皮を噛み破り、磨り潰して中の栄養分を抽出しなければなりません。食物繊維は便秘を防ぎ、食べ物の有害物質を吸着して排泄する大事な働きがあります。できるだけ野菜を多くとり、偏食にならないように心掛け、ゆっくりとよく噛む食事をしましょう。

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